ガイドブック

馬込文士村ガイドブック
(改訂版)第3刷

「馬込文士村ガイドブック」は文句なしに楽しいガイドブックである。

 

収録は石坂洋次郎稲垣足穂今井達夫宇野千代尾﨑士郎片山広子(『燈火節』を探している人も多い筈。アイルランド文学の翻訳では松村みね子)

川瀬巴水川端茅舎川端康成川端龍子(龍子と茅舎が兄弟なのは知っていたけど、お母さんが違うってのは知らなかった)

北原白秋衣巻省三倉田百三(薄田研二に妻を喜んで譲ったって知ってたかい)

小島政二郎小林古径榊山潤佐多稲子佐藤朝山佐藤惣之助子母沢寛城左門添田さつき(知道さん・唖螺坊の長男)

 

このほか"文士村紳士録"に収録されている51人がいる。紳士録だが淑女もいるよ。こちらも列記していると字数が足りなくなりそうだ。北園克衛がいる、高田保が、立原道造が、長谷川潔が、国枝史郎、草野心平、西東三鬼、秦豊吉。わあ、こんな、あんなの、百人がつまってA5判ちょい縦長の変型。……104頁、写真も豊富。それでなんと、お値段は200円!

大田区立郷土博物館 の他、山王会館大田区役所区政情報コーナー、大森駅周辺の書店で販売されている。

 

 本書の中で、山本周五郎が書いている。--なにより溜るのは酒屋の勘定であった。(中略)私でさえ十五円くらいの勘定が溜っていた。かの侍大将(註 尾﨑土郎)の金額も侍大将その人から聞いた記憶がある。

そのほかにどれほど溜められていたかはわからないが、これらの債権を自分の背中ひとつにぜんぶ背負って、或る夜ひそかに、三河屋のおやじは夜逃げをしてしまったのである。---  ウーン、すごい話だ。このかわいそうで、とってもエラい三河屋のおやじさんはその後どうなったのだろうか。だれか教えてくれないか。

 

七痴庵(彷書月刊・98.7月号より)